審査の結果....今日の自分は何点?と言われれば、今の自分の実力や状況、性格など色々ひっくるめれば、100点だと思いました。あくまでも、この瞬間に私が出来る範囲としてです。他の人と比べていません。絶対的な値です。今できることは、すべてやったという感じでした。
今回の審査。まるで普段の稽古のようにダメ出しされたりしました。
緊張の一瞬です。
自分でも明確な理由は良くわからないのですが、なぜか、きっと合格していると思いました。私は元々そんな楽観的な人間ではありません。ウチの道場にはポジティブな仲間がいます。例えば試合まであと一ヶ月のとき、その方は「一ヶ月もある」と言います。私は「一ヶ月しか無い」と言うタイプです。どっちが正しいか?。そりゃポジティブに考えるのが正しいに決まっています。心配しようが、気軽に過ごそうが、時間は公平に速度を変えずに流れます。だったら、余計なことを考えない方が良いに決まっています。
そんなふうにネガティブな私が、合格を信じていたのは不思議でもあります。
多分ダメ出しのせいだとは思います。「落とす人にダメ出ししないだろう」とか考えていたのかも知れません。この3ヶ月後ぐらいに、「実はそうでも無かった」という事を知るのですが。
審査発表では、合格者の名前が呼ばれます。なかなか名前を呼んでもらえません。
合格者の発表。合格するに決っているという根拠の薄い思い込みのため、そんなに緊張していない。 |
かなり後の方で、果たして呼ばれました。念願の黒帯です。
高校生の頃、「正式な黒帯」になれなかった話はしました。そしてここまで、「オッサン」としてはかなり無理をしてきたつもりでした。感動で泣いても良さそうな場面です。でも不思議と冷静なのです。
思い起こせば、いつだってそうでした。受験で合格したとき。大人になってあまり容易には取れないIT関連の資格を取った時、成人式、結婚式、昇給、昇進....全てにおいて、求めているときに思うほどの感動が無い。いちいち、思い描き過ぎなのかも知れません。本当に不思議です。ある意味「つまらない男」なのかも知れません。
帰りは、師範の車に同乗して帰りました。一緒に広報として行って下さったドンが、メールで道場の仲間に連絡を入れたため、祝福のメールがジャンジャン届きました。なかなか生きていると、人に祝福してもらう機会なんて滅多あるものでは無いです。ここで少し嬉しさが込み上げて来ました。
家の者に「帰るメール」をした際に、結果を書かずに送りました。家の者は特に空手をしている私には興味が無いようなので、あえて書かなかったのですが、そうしたら、結果を聞いてきました。少しは気にしていたのか、とても気にしていたのか、ここが分かりにくいから、一般的に男女間には色々余計な摩擦が起こるのかなぁ~とか考えてしまいます。
昇級、昇段、決まり次第、帯を渡すのが習わしです。ウチの道場のものか、一般的なルールかは知りません。多分一般的にそういうものなのでしょう。
私の帯は、大手の道衣メーカに頼んだ関係で、混み合っていて、間に合いませんでした。次の火曜日に稽古に行くと、師範がご自身の予備の黒帯を貸して下さいました。かなり年季が入っていて、思わず拝みたくなる、恐れ多い感じの帯を一日だけ締めて稽古しました。
そして、その次の稽古だったと思います。帯が届き、授与されました。
硬くて、結びにくくて、ちょっと動くと解けてしまいます。
刺繍の色は、希望を聞いてもらえるらしいのですが、取得する前に言うのもどうかと遠慮してしまったのと、急だった事もあり、自動的に選ばれてオレンジです。師範の好みの模様です。
高校生のときは赤だったし、師範の普段使いの帯は赤なので、同じが良いかと思っていましたが、よく考えたら、高校生の頃はオレンジが良いと思っていたし、実は私自身、刺繍の色にそんなにこだわりは無いような気もします。
ちなみに、最近は色々な色の刺繍があります。白とか白銀とかが今どきは少し人気みたいです。青とかピンクもあるのですが、あまり見たことがありません。
黒帯の意味は、「何色にも染まらない」という意味だそうです。ウェディングドレスとは逆の意味ですね。
締めると、気が引き締まるような気分でした。この頃、師範がブログに、私の昇段を受けての事だと思いますが、「黒帯の意味」について触れておられました。「何色にも染まらない」の他に、「初段でも十段でも黒帯」というような意味の事が書いてあったような気がします。特に協会では、帯に装飾を入れたりはしません(※)。文字通り、見た目では、初段でも三段でもわからないのです。
一つの大きな境界を越えてしまったわけです。
※他流派か団体によっては、段位に応じて、白いラインのようなものが増えてくところがあったような気がします。
道場ではしばらく、仲間から、ビックリするくらい祝福を受けました。
でも浮かれている場合ではありません。
冒険モノのドラマにありそうなパターンですが、私が「ゴール」だとか思っていたこの瞬間は、実は「スタート」であり、新たなる試練の幕開けだったのかも知れません。
To be continue.....
~あとがき(Afterword)~
この記事を書くために、過去の色々な記録を引っ張りだしました。
特に手書きの手帳は有効な資料だったのですが、このお話の1-(6)以降が、「昇段審査と同じ年の手帳に書いてある」という事実に、驚いてしまいます。入門してから1年と3ヶ月間のお話なのです。
黒帯になったら、少し速度を落として、のんびりして行こうとか企てていたのですが、結局この調子か、これ以上に突き進む事になります。オヤジであるがゆえ、現役で公式戦に出場する、さらに勝とうとか考えるなら、もう私にはそんなに時間は無いだろうと考えます。
オヤジのホシの次なる目標は、「チケットを無しで武道館へ行く」「客席で無くアリーナに立つ」か?とか、夢を見るのは自由なのを良いことに、無謀な事を思い描いています。そしてやめておけば良いのにこの後その方向に進もうとします。
このお話は、私が「オヤジのホシ」になるまでのサクセスストーリ(?)として、取らぬ狸の皮算用的に、まだそうはなっていないし、その目星も立た無いのに、書き始めたのです。だからこの続編の結末は現在わかりません。ウチの道場には他にもたくさんのオヤジとそして大人の女性が沢山いらっしゃいます。周辺の道場にもそんな方が一杯いらっしゃいます。私がオヤジのホシにならなくても良いかとも最近思います。話が進んでいくうちに、別な人が先に「オヤジのホシ」になって、私は傍観者といしてこの話を綴っているかも知れません。そんな形で、傍観者になるのも悪く無いと思います。理想は「オヤジノホシ達」ですかね。執筆開始時と、ウチの道場の雰囲気は変わりませんが、状況は変わってきています。
でも私は何一つ諦めるつもりはありません。きっと何処かでオヤジのホシを掴みたい。そして、繰り返しますがそれほど時間は無いはずです。無茶をすると簡単に壊れるので、試行錯誤、ジタバタしながら精進していこうと思うのです。
最後に、ご指導頂きました、師範、先生方、一緒に頑張った道場の皆様、近隣の道場の皆様、空手で不在になりがちなのに、特に文句も無く送り出してくれた家の者に深く感謝致します。
押忍!!